隣の家に……がいる……

姪っ子よ。ねーちゃんは洗濯物を干しているのだ。人目に付き難いベランダといえども、全く見えない訳ではないのだ。君はいいかもしれない。窓越しに部屋の中からベランダを見ている君はいいかもしれない。しかし、いい年こいたすっぴんの女が、ベランダで一人踊って戯けて「Mちゃ〜ん」などと甘えた声をあげて手をふっているところを御近所の人に見られるのは、立場上あまり嬉しくない。
ああ、姿が見えなくなったからといって、悲しそうに呼ぶでない！！ハンガーが足りんようになっただけだ！
あ！！！
お前！
今、どさくさまぎれに「にーちゃん！」って言っただろう！！
よーし！これ干し終わったら、出かけてやる！！もう、泣いて呼んでも無駄だからな！人生というのは、かくも難しく、かつ口から過っていくものだということを、若いうちから経験しておくがいい。
ちゅーか、君と遊んどったら時間なくなってもうた……。急がんと……。