おいらの髪

2000年9月30日
おいらの髪の量は多い。そして長い。長いのは単に金がなくって、頻繁に美容院に行けないからなのだが、量が多いのは生まれつきである。
ある日、せっせと美容院の店長がおいらの髪をカットしてくれていた。下に落ちていく髪を見ながら「店長、おいらの切った髪で、誰か一人ぐらい救えそうな気がするよ」と言ったら、店長が「充分救えるね」と言ってくれた。
その後、一時間かけて、店長はおいらの多い髪をすいてくれた。厳密に言えば、一時間かけたのではない。一時間かかったのだ。すき終った後、店長は疲れ切った顔で、その成果を見て言った。
「後二人は救えるね」。
当たり前だが、それらの髪は全て捨てられてしまった。誰かを救う事もなしに。
あれから数カ月がたつ。
また、三人ばかりは救える程の髪に育っているのだが、切ればこの髪はまた単なるゴミとなって消えていくのだろう。
人によっては限りある資源。
この髪で救える人がいるなら救ってやりたい。
この髪が、人の為になるのなら!
ああ!人の為になるのなら!
……もちろん、謝礼金も忘れずに。
今月も髪を切りに行く金がないのだ。

『人の為』と書いて『偽り』と読む。
おいらが次に美容院に行けるのは、いつになるのだろう……。

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