西日本屈指の愛しい母親

その日、母親は送られてくるはずのFAXがなかなか送られてこない事に、ややご立腹気味だった。
そして、一向に紙を吐き出してこないFAXに近づき、排紙部分を見ると…。
そこには助けを求める瓦礫の下の人の手のように、白いFAX用紙が力なく垣間見えていたのであった。

母親の中のレスキュー魂に火がついた。

FAXの排紙口を上げ、その惨状に悲鳴を上げつつ、くしゃくしゃに折れ曲がっている大量のFAX用紙を救出していく。
しっかり〜せよと抱き起こし〜〜。
傷は浅いぞ、しっかりしろ！
そして助け出した瀕死のFAX用紙（感熱紙）には、母親宛の文書ではなく、ちょろのすけ宛の資料が印刷されていたのである。

母親、冷静なレスキュー隊員から、一気に野次馬パニック状態に陥る。

そうして、仕事中のおいらの携帯が密かに震える羽目になった。
なぜ密かに震えるのかというと、サイレントバイブに設定しているからだ。
仕事中の最低限のマナーだな、こりゃ。
講習の途中では電話を取る事ができないので、途中休憩の間に連絡をしなおすと、いまだパニック状態の母親が出た。
母親は一息に事情を説明すると、おいら宛のFAXの話をしだした。
それはおいらがひたすら待ちに待っていたFAXで、土曜日までに頭に入れておかねばならない資料であった。
もちろん、その旨がそのFAXにも書かれてあり、それを見た母親をさらにパニックの坩堝に突き落としていたのであった。
母「あんなぁ、FAXが中でくちゃくちゃになっていてな、それを広げてみると…」
そうか！感熱紙だからなぁ。くちゃくちゃになったら、線が沢山ついて、読めなくなるかもしれないなぁ。いや、それ以前にきちんとデータは受信されていたのだろうか。
仕事が終わってから連絡を入れて、再送信してもらわなならんのか…くくく・・・辛い。
母「（がさがさ・・・）あ、読めるわ！」
読めるんかい！！
ち「読めんねんな？」
母「うん、そやけどな、最初の紙に5枚送信しますって書いてるねん。でな、送られた用紙を数えると〜2枚目がぐっちゃぐちゃでな・・・」
2枚目以降がアカン状態なんかな〜。かなんな〜。仕事終わって連絡取れるかな〜。でも、明日までには頭に入れとかんとアカンしな〜・・・。
母「あ！」
すわ！何事！？やはりアカンのか？！
母「5枚あるわ」
なにがアカンね〜ん！！
なにが問題やね〜ん！！
母「いや、それがな、ちょろのすけちゃん、2枚目がな、大変やねん。」
なんやねん！2枚目が！2枚目がどないしてん！
母「2枚目が！3枚ある！！！！」
・・・それって、なんか問題あるのん？

どうやら全ページ無事に届いていて、なおかつ全ページ問題なく読めるらしい。
おいらは一息つくと一番の懸念を口に出した。
ち「それ、明日までに頭に入るかなぁ・・・」
母「あ、それ大丈夫。たいしたことないって。」

なんでそれだけ冷静に言いきっとんねん、君。