じすいず大阪すとらっと

接骨院の近くの小さな郵便局に、姉に頼まれて通帳記帳に行った。
土曜日なので郵便局自体は閉まっている。
いつ行っても誰もいない郵便局の1台しかないキャッシュディスペンサーが12：30まで、ひっそりとお仕事しているのだ。
接骨院はたいてい混雑していて、ひどい時は「1時間ぐらい遊んできたら？」と言われる。
待ち合い室が一杯なため、空くまで追い出される始末である。

だが、その日に限って接骨院は空いていて、早く戻らないと自分の順番が来そうだった。
ちょろのすけは走った。
たったたたたた走った。
そしてキャッシュコーナーへと飛び込むと、そこには！！
黒いジャンパーを着た男が、ヘルメットをかぶりながら、黒い大きなカバンをATM機の前に置きごそごそしているではないか！！
ちょろのすけ大ピーンチ！！
瞬間声もでず立ち尽くすおいらをみて、ヘルメット男も驚いて動きを止めた。
おいらの人生が走馬灯のように頭の中を巡り始める。
なんてこった！
おいらここまでの人生であったか！！！
強盗のいる所に飛び込むとは、おいらはなんとマンの悪い！！

「いや〜、こんな人のこ〜へん郵便局に人が飛び込んできたら、おっちゃん強盗入ってきたんが思たやんか〜」
すっぴんで入ってきた裏若き乙女に言う事か、それが！
ちゅーか！
ヘルメットかぶって黒ジャンパー着て黒い大きなカバン持ってるそっちの方がよっぽど強盗やんけ！！
紛らわしい格好してんな、ダボ〜〜！！！

そうしておっさんは、スタスタと郵便局を出て、あまつさえ通りすがりの商店街のおばちゃんと挨拶し合って、スーパーカブに乗って行ってしまった。
後に驚愕の余韻を漂わせてるおいらを残して………。

なにが一番空しかったかて、おっちゃんに声をかけられて
「なにゆーてんねんな〜、こっちかて驚いたって。強盗おるわて。」
と、大阪のオバハンよろしく咄嗟に返してしまった事だろう…。
驚きのあまり停止した思考能力と違う所で、おいらはおっちゃんとお話ししていたのだ。
これはもはや、大阪的反射会話。
脳を使わず、脊髄で会話しているに違いない。
その証拠に、おいらはおっちゃんが出ていってからも数瞬ほど動けなかった。
恐るべし！大阪DNA！
恐るべし！大阪サラブレッド！

そう言えば昔、東京で大阪の友人と話をしていたら東京の人に
「どうしてそんなに言葉が出てくるの？」
「次に言う言葉をいつ考えてるの？」
と不思議そうに聞かれ、
えええ？！考えながらしゃべくっとんかい？！おのれら！
と、それはそれは驚いた事がある。

大阪の人間は脳みそで話さない。
反射で話す。
…こういう結論に至ると結構情けないものがあるなぁ……。

それにしても、何事もなくてなによりだった…。